

そういえば、フィンランドには300以上の島があると何かで読んだ気がする。
船から自転車に乗って降りてくる人の姿が見ながら思いだした。
どうやら地元の定期船のようである。
僕の持っているツーリストパスでも乗れるようなので、どこに行くのか知らないが乗ってみることにした。
10年程前、ヴェネチアで目的地の違う水上バスに間違えて乗ってしまった。
偶然、ムラノ島というヴェネチアグラスの工房がある島に辿りつき、結局、半日以上、その島散歩を楽しんだ。
そんな出会いを今度も期待していると観光客が何組か乗りこんできた。
この船は、ある程度、知られた場所に行くのかもしれない。
ある程度どころかその場所は、世界遺産の「スオメンリンナ」島だった。
島のインフォメーションセンターには日本語のガイドブックまで用意されていた。
手にとって読んでみると、18世紀中頃、フィンランドは、ロシアからの脅威に対処するため、このスオメンリンナの要塞の島を建設したらしい。
しかし、結局、19世紀頭に征服されてしまった。
その後、様々な歴史を経て、約90年前にフィンランドは独立し、この要塞の島はそのままの形を残している。
まだ観光の時期にしては寒すぎるためか、閑散とした要塞の島を散歩する。
800名程度の島の住民もいるようで、時折、犬の散歩をしたり、ジョギングしたりしている人に出会うくらいである。
オフシーズンの観光地に来たような寂しさが漂う。
ゴミ箱!
ゴミ箱さえも要塞の島に合わせて作られたよう思えてくる。
ある意味、君がこの島の美化を守っているのだよ。
お疲れ様。
と声をかけると、向こうの方にリュックを背負ったツーリストらしき男性が内股で走っていく姿が見える。
恐らくトイレだろう。
昨日の僕と同じである。
ただ、この島には公共のトイレがたくさんあるはずなのになぁ。
インフォメーションからいくと、この近くにもあるはずなのに。
トイレは行ける時に行っておこう。
散歩の鉄則である。
げっ!
閉まっている。
しかも厳重に。
トイレさえも厳重に守られている。
数十分後、僕も彼と同じようにトイレを探して走りまわるのであった。
まだまだ、スオメンリンナの春は遠い。
何だ?あれ?
4番トラムに乗っていると、ふと奇妙な建物が目に留り、降りてみることにする。
川沿いを歩いて行く。
いや、待てよ。
地図を見ると数百メートル先は海である。
ということはここも海と言っていいのかもしれない。
どちらにせよ、水は凍り、さっきも、氷の上を鳥が歩いていた。
僕も氷上散歩をしてみたくなったが、割れ注意のような標識を見て断念する。
いつのまにか住宅街に迷い込んだ。
スゥエーデンの建物は飽きることがないくらい楽しい建物が多い。
俳優の渡辺篤史が、建物を巡るテレビ番組があったが、きっと彼も様々な建物を見るのは楽しいだろうなぁと、彼の気持ちになって探索してみる。
寒さのせいか身体に異変が起きた。
さっき、カフェで飲んだビールのせいか、急にトイレに行きたくなってきたのである。
渡辺篤史だったら撮影中、トイレに行きたくなったら、きっと取材先の家のトイレを借りるのだろう。
しかし、僕の探索は建物の中には入れない。
見られるのは外壁だけである。
ともかくトイレを探さなければ。
街中だと公衆トイレやデパートのトイレなどがあるが、さすがに住宅街には見当たらない。
見当たらないとわかると、余計に尿意をもよおしてくる。
small or big?とビールのサイズを聞かれ、調子にのって、bigを選んだ自分を呪う。
何度、川、いや海、いやどっちでもいいよ。
とにかく水に向かって、立ちショ×してしまおうと思ったことか。
やっとの思いでセルフサービスのガソリンスタンドを見つけ、車で乗り入れるのではなく、徒歩でトイレに駆け込んだ。
開放感に浸りながら、そのガソリンスタンドの近くに探していた建物を発見した。
集合住宅であった。
写真に収めた後、新たな問題がやってくる。
いったい、ここはどこなんだ?
マイナス4度!
ヘルシンキの空港に到着した。
デリーの空港は、35度以上はあっただろう。
気温差約40度。
空港の外で凍える前に作戦を練ることにする。
インドやネパールのチャイの値段の10倍近い2ユーロ(約320円)のコーヒーに多少、違和感を覚えながら、ヘルシンキの地図を広げる。
土地勘などないのだから練りようがないのだが、1週間で、どのあたりを散歩するかを想像する時間が楽しいのである。
まずはホテルにチェックインしよう。
インフォメーションでホテルの住所を見せると
「バス?」
と僕が質問の言葉を投げかける前に逆に聞きかえされた。
タクシーのおおよその値段を聞こうと思ったのだが、咄嗟に
「イエス」
と答え、バスで行ってみることにする。
教えられた21番乗り場にやってきた165番のバスに乗り込み、女性ドライバーに「セントラルステーション」と告げ、約4ユーロ(約640円)支払った。
窓に移る雪景色を見ながら、北欧独特の安心感に浸っていた。
ただ、歩いている人の姿が、ほとんど見当たらないのが少々、気にかかる。
セントラルステーションで降り、トラム乗り場を探す前に、またコーヒーが飲みたくなった。
本当は、強いお酒をショットグラスで煽りたかったが、さすがにバーは開いていなかった。
カフェを探しながら駅の中に歩いていると観光案内所をみつけると、貼紙に、今日、明日は、イースターでお休みと書かれている。
人が歩いていないはずである。
これは今日の街は閑散としていそうだ。
街の建物の扉を撮影するのであれば、今日、明日はいいかもしれないなどと思いながら、カフェに入り、空港から駅までの道を思い出しながら、もう一度、地図を広げ、コーヒーを飲む。
この街を散策するにはトラムに乗りまくると面白いかもしれない。
だとすると乗り放題のチケットを購入した方がよさそうだ。
恐らくツーリストパスがあるはずだ。
中央駅のカウンターで聞くと、「キオスク」で売っているという。
そう、日本でもお馴染みのあの売店である。
1週間券はないそうなので、5日券を購入することにした。
これさえあれば地下鉄もトラムもバスも乗れる。
街の交通網を手に入れた感じである。
早速、ホテルまで行く4番トラムも、このチケットで乗る。
ヘルシンキの街の散歩が始まった。